大判例

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福岡高等裁判所 昭和26年(う)137号 判決

弁護人の控訴の趣旨(量刑不当)に付て判断する前に職権を以て調査するに原判決は「被告人は人吉市農業協同組合主事で会計係として金銭出納その他会計事務一切を処理していたが昭和二十四年四月初頃から同二十五年二月末頃迄の間人吉市紺屋町一二二番地の右組合事務所等で業務上保管中の組合金五十一万千三百五十円位を着服横領したものである。」

と判示している。右判示によると右判示期間に於ける着服行為が一回でないことは明である。横領罪に於ては不法領得の意思の発現した都度即ち本件に於ては着服の都度一個の横領罪が成立するから本件は数個の併合罪と認むべきである。(本件について一個の不法領得の意思に基く着服と認むべき証拠がない)改正前の刑法第五十五条の連続犯を構成しない複数の犯罪行為を判示するにはその行為が同一の罪質であり手段方法が共通であつてもその各個の行為の内容を一々具体的に判示し日時、場所等を明かにすることによつて一の行為を他の行為と区別出来る程度に特定し各個の行為に対し法令を適用するに妨げない程度に判示しなければならない。

然るに原判決は一個以上の行為に共通する始期と終期とを掲げその合計額を掲げたのみであるからその各個の行為を特定したものということは出来ない。従つて刑事訴訟法第三百三十五条所定の罪となるべき事実を特定しないものといわねばならない。起訴状に記載すべき公訴事実は訴因を明にし罪となるべき事実を特定しなければならない。

本件のように公訴事実の明確を欠く場合は検察官に対し訴因の変更を命じた上審理判決すべく若し検察官に於て公訴事実を特定しない場合は不適法な公訴として公訴を棄却すべきものと思料する。こと茲に出でないで各個の行為を具体的に判示せず判決した原判決は理由不備の違法ありと云うべく破棄を免れない。

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